第15話


 どこからが歌が聞こえてくると思ったら、あれは最近森にやって来た商人の女の子です。こんな夜中に出歩いているのは、スプークス集めのクエストでもしているからでしょう。近付いてみれば、頭の上にランタンを乗せて、本を読んでいます。

「ちいちいちい 迷子になったら寄っといで 迷子になったら寄っといで ちいちいちい…」

 読書に夢中になっているのか、鬼火寄せの歌はページをめくるたびに少し止まりました。頭上では色とりどりのスプークスが花火ドロップのように弾けて、ゆらめき、灯っています。
 彼女のうまいところは、彼らの性質を利用しているところでしょう。スプークスが近付くと、ランタンの扉を開けてやり、彼らが入れば扉を閉じました。

「星が落ちてきたのかと思った」眠たげな小熊がそう云って目をこするのを見送りました。僕もねぐらへ戻ろう。最後に彼女を見やると、不意に視線があい、小さなつむじを見せてくれました。目を覚ましてしまったけれど「気にしないで」僕は云います。だって、君の仕事でしょう。

 森を歩く獣たちが大きなあくびを噛み殺した、秋の夜のことです。


魔女の森にて

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