グランノルディカ狩猟祭にて
しずみさん宅 新米狩人アントニーさんをお借りしました
第6話
その日、アカリはトウカ族の夢を見ていた。
アカリが旅立つ少し前のことだ。アカリに家とオジジを残して、気付けば母すらも居なくなっていた。しらじらと光さす星月夜に、パチパチと燻ぶるかがり火の跡。ひと際大きく炭火が跳ねる。砂に埋もれた井戸、家畜の連れ出された放牧用の柵、家々の杭の址はまるく雨水をたたえていた。もう誰もこの場所に帰ってくることはないのだと気付いたとき、アカリは本を閉じ、荷をまとめ始めたのだった。
風が撫ぜ、また爆ぜた火の粉が心配そうに照らした少女の横顔は、別段、さみしそうでもなかった。
- - - - - - - - - - -
アウィスの使いが窓辺へと引きつれてきた暁光は、もうすっかり生ぬるく、部屋へ短い影を落としていた。アカリが時計を持っていたのなら、その針は真昼を指し示していたことだろう。
重いまぶたを手の甲でこすり、簡素なベッドから未だまどろみに浸かったままの脚を引き抜くと、ぬばたまの髪に手櫛を通してするりと寝癖を払った。
元あった平原ツメクサの花冠の代わりに部屋の壁にかかるのは、底が奇妙なアーチを描いた銅製の調理器具類である。アカリは汲み置きの井戸水に、その内の薬缶とフライパンとを沈めると、窓の外を走る蒸気パイプの上に慣れた手つきで乗せる。
「…あれ」
底部アーチの丸みは、しっかりと配管をとらえていた。それにもかかわらず、平素なら瞬間沸騰するはずの薬缶がうんともすんともいわない。薬缶をチェストに敷かれた鍋敷きへ下ろし、フライパンへ手の平をかざしてみたが、熱は感じられなかった。水滴さえも乾かない。見れば、昨夜まで絶え間なく赤々と熱を帯びていた蒸気パイプは、黒く沈黙していた。
「……運休日かな」
配管地図と照らし合わせて確かめようにも、アカリは暦を持っていない。
仕方なく、まだ冬のような顔をしてきんと冷えた井戸水に浸した手ぬぐいを絞り、顔を拭うと、布団にもぐりなおして服を着替え、靴を履いて部屋を出た。ベッドの下では、目玉焼きを免れた飛雷千鳥の卵がかちかちこごえている。
この時点で、窓外に広がる蒸気都市が異様な静けさをたたえていることに気付くことが出来たなら、彼女の"今日"はまた違ったものになっていたであろう。
時は、グランノルディカ冒険者教会主宰"狩猟祭”当日。避難合図のサイレンは、もうとっくに鳴り終わって久しかった。
- - - - - - - - - - -
雑踏が消えた街はがらんどう。
グランノルディカの街並みというのは、他の都市とは大きく異なる点がいくつもある。ひとつは蒸気都市特有の、町中に張り巡らされた蒸気パイプ。またひとつは、狩猟祭に備えたよろい戸である。
大型モンスターの突進にも耐えうるよろい戸は、粗末なものでも堅いオーク製、立派なものだと堅牢なアーク鋼で、ずらりと下ろされたそれらの物々しさたるや、まるで平屋建ての要塞にいつものグランノルディカをちょんと乗せたかのようだ。
かくして、アカリ・トトゥルムの迷い込んだ路地は、彼女の記憶しているものから随分かけ離れた迷宮砦と化していた。記憶どおりなのは、せいぜい見上げた蒸気パイプの網目、その配置ぐらいだ。
であれば、さしものアカリといえども事態の深刻さに気付くというものである。
「開始のサイレンまでに出られないとなると――…」
腕組み壁に背を預け仰いだ空に、ごうごうたなびく飛行船雲が、狩猟祭開始までの秒読みを描く。3,2,1…きれいな丸い輪が浮かんだと同時に、わっと喧しいサイレンが耳をつんざいた。
「まずいなあ」
次いで、街の各地で解き放たれたと思しき獣達の咆哮。
頭上に平原オオカミの影が差したのに気付くと、アカリは地を蹴って駆け出そうとした足を止め、後ずさりして再び壁に背をつけた。背後の壁を飛び越え、アカリがまさに進もうとしていた場所に平原オオカミが着地する。凶暴なモストロがアカリの方を振り向く前に、彼女は獣の背をぽんと馬跳びして越えると、視線を左右に走らせて、馬代わりになる生き物を探した。
当然、狩猟祭に無用の被害を受けないよう、家畜の類も避難済みだ。一匹だって見当たらない。「急ぐのはどうも苦手だよ」後ろ足で砂を蹴り、追っ手に浴びせるようにして駆け出した。
狭い路地は危ない。もっと開けたところに出なければ。
いくつものアーチをくぐり、忘れられた洗濯物のロープをかわして、アカリはとうとう、転がるようにして大通りへと抜け出た。狭い路地から一転、頭上の青空はぽっかりと広く、狩猟祭を祝う飛行船がまばらに散っているのが見てとれた。
『おおっと、ここでまた新しい挑戦者の登場です。露天通り中央を御覧ください、平原風の織物に身を包んだあの小さな勇者は――…おい、誰だあの子!登録されてないぞ!』
立ち並ぶ家屋のよろい戸に背をつけ、足元に落ちた角材を拾うと、唱えなれた文言を呟く。地を垂直に穿つ角材は、臨時の杖代わりだ。突いた場所から、めきめきと光の根がアカリの足元に伸び、間一髪、躍り出てきた平原オオカミの鋭い爪が届く前に、彼女の周囲へ光魔法の結界が展開された。
ぎいん、と金属同士を打ち鳴らしたような不協和音が響く。火花が散る。
「あれ、アカリちゃんじゃないか?」
「おいおい誰も起こして来なかったのかよ!」
「あの子は商会所属の商人だ!登録なんかしてねえぞ!」
「アカリちゃーん!逃げなさーい!」
『なんということでしょう!街に取り残された年端も行かない少女が平原オオカミの猛攻を受けています!』
「助けてくださあい」アーチ状に組まれた石造りの城壁から身を乗り出す観客達に、ひらひらと大きく手を振ってみせるアカリは、さぞ危機感なく見えたことだろう。
実際、旅慣れた彼女は、得意の結界を張ることですっかり安心していた。狩猟祭にかり出されるモストロは、比較的弱い平原地域のものがほとんどだ。つまり、そのほとんどの連中はこの結界でしのぐことが出来るのだから。
もっとも、平原オオカミが二体以上で挑めば結界には大きなひびが入るだろうし、ラムートンの突進を受ければ、薄い氷が砕けるように割れてしまうに違いない。救援の手が伸べられなければ、哀れ商人の娘は狩猟祭の華々しい歴史にオイルスライムよりもべったりと濃い血の跡を残すことだろう。
商会連合の見知った顔がどやどや冒険者教会と揉みあうのを眺めながら、アカリは踏ん張る足に力を込め、結界が破られないよう角材を杭のごとく打ち込んだ。アカリの結界は、彼女がその場から一歩でも動こうものなら解除されてしまうのだ。気は抜けない。
「やっぱりゴーレムはすぐに動かせないか。なら――…スペングラー翁、スペングラー翁はおいでですか!」
「はいよお」アカリの呼びかけに、アーチの欄干へとのっそり上がってきたのは、白い髭もじゃのドワーフ族である。胸に商会連合所属の錫鉛合金ボタンをつけたつなぎの作業着は、蒸気都市に生きる職人らしくところどころ溶けあとが目立った。
スペングラーと呼ばれたドワーフへ見えるよう、アカリが高々と右手を挙げる。小指から中指までの三本を立て、親指を人差し指で押さえるように折り曲げている。「わたしの窮地に免じて――…」アカリがひらりと手を振ると、スペングラーは髭をもみながら、食い入るように指を数えた。競りでは見慣れた光景である。
「火打ち槌、大中小で、これでいかがです?」
「ん、売った!」
「有難――…わ、わわ」
咄嗟の商談を済ませると、角度を変えて二度三度と連続突進を仕掛けてきた平原オオカミに耐えるべく杖を構えなおす。通算五度目の突進の後、草原オオカミは気がかわったとでも云うように、急にきびすを返した。アカリがぎゅうと杖を握る。やれ助かったかと息を吐いたのは、旅を知らない都市住まいの商人だけだろう。
「オジジが居ないときにこれなんだから…」
オオオーンン…。
アカリが頼れる相棒の不在を嘆く声も空しく、その遠吠えは轟いた。
平原オオカミは、群れで狩りをする。一匹の手に余る獲物がいれば、仲間を呼ぶのは当然のことだ。魔女へ祈る間もなく、最早ただの足場と化した配管の上、あちこちから現れた四つ目六つ足のモストロが小隊を形成し始めた。
次に踏み込んで来られた時が、アカリの薄い肩の骨にまで平原オオカミの無慈悲な牙が食い込む時だ。
せめてもの抵抗に、瞼を伏せ、アカリは呪文の暗唱を始める。人間の少ない魔力では、目くらましの光魔法を放つのがせいぜいだ。ほんの数秒でも強烈な光を浴びせられたら、それでも少しは逃げる隙も生まれるかもしれない。その後で、群れの爪が届かぬほど遠くへ駆け出せるだけの素早さが彼女にあるかは別として。
さて左右どちらの腕を犠牲にしてこの窮地を脱するべきかと彼女が思い巡らせ、高所からその光景を見下ろす商会員達が目を覆った、まさにその瞬間。
ワッという歓声が、全員の背に届いた。どたどたと城壁の上を駆けてきたのは、また別の挑戦者を見守っていたらしい人々である。彼らは口々に新米らしい狩人を応援するも、誰もその名を呼びはしない。それもそのはず、視線の先で折れた蒸気パイプを振るう彼は、古ぼけた銅製の冑(かぶと)を目深に被り、いかにもどこにでも溢れている冒険者のひとりといった風体だったのだから。
商会員と向こうからきた人々の背がどんと合わさったのと、彼がアカリに気付いたのは、殆んど同時だった。
モストロの鋭い牙と消化液で鋭利になった蒸気パイプの断面が、あたかも剣のごとくざりざり地をえぐる。
「う、おおおおお!」
一匹の平原オオカミを追い、駆けて来た勢いもそのままに、大きな弧を描いて振り切った刃は、敵の六肢を五肢と断ち切った。
「うえ゛っ」
ごとり。眼前に転がった仲間の足にひるんだ平原オオカミの鼻先を走りぬけた狩人の腕の中には、取り込まれた洗濯物のように身体を折り曲げたアカリが目を回していた。
今度こそ、商会員は後からきた観客とあわせてわっと歓声を上げたのだった。
「女の子…? 戦えないならなんでこんなところ、に!」
たなびくアカリの腰布に喰らいつかんと躍り出た平原オオカミの一匹を、また横なぎに払う。その配管を、また別の平原オオカミが跳びかかって噛み潰す。アカリという大荷物を抱えながら、それもどこかに怪我をしているのか、自身の身体もかばいながらの戦闘である。しかし、新米らしい狩人は、ある程度の強さのモストロを相手にするのには手馴れた様子だった。
狩人がなけなしの武器を奪われ、苔色のモストロがそれを吐き捨てる。そこでようやく、アカリが目を覚ます。
「う、布になる夢をみたのは初めてです」
抱えられながら、ぱたぱたと狩人の背を手で探り「鞍は…?」とぽつり呟く声は、未だ寝ぼけているようだったが、天を仰ぐ頭は通常営業だ。見上げた配管から現在地を的確に割り出す。
「蔵…?」
「ああいえ、何でもありません。ええと、それで時に、貴方さまはどなたでしょう。私、先ほどまでモストロにすわ食われんというところだった筈ですが、はて、五体満足です」
「……名乗るほどの者じゃない」
苦虫を噛み潰したような声で冑を深く被りなおす新米狩人に、なるほど人見知りなのだなと適当かつ的外れな察しをつけ、アカリはそれ以上の追及を止めた。どこからかき集めてきたのか、てんでばらばらの装備品は鎧のパーツすらサイズがまちまちで不恰好だ。
「左様ですか。では、恩人さま。そこを突き当たって右に進んでいただけますか」
「道がわかるなら有難――…右ィ!?」
「はい、右折です」
耳元でがなられた声にアカリが両耳を押さえる。
さあ、突き当たりのT字路からは、明らかに右からずちゃずちゃと人ならざるものの歩む音が聞こえていた。見よ!ぬめる身体をしたたらせた雷スライムがぐねぐねうねり、腹の中の哀れな妖精を踊らせているではないか!背後には、平原オオカミの群れがもうもう土煙をあげ追ってくる!
手元に獲物のない狩人は、背にあるべき剣や弓矢に手を伸ばしては引いた。その動きを眺めながら、アカリが言う。
「おや、恩人さま。もしや武具がお入用ですか」
「見れば分かるだろう…!」
アカリは握りしめたままだった角材を雷スライム目掛けて投げると、それは見事べとべとした粘性の身体を地面にはりつけた。
粘性動物に打撃はあまり有効な手段とはいえない。小娘の咄嗟の行動に、狩人が冑の内で顔をしかめる。構わず、アカリは鎧を叩いてまた指示を飛ばした。「その杭を踏んで、向こうへ飛んでください、急いで!」
まるで鞭打たれた馬のように、反射的に身を翻した狩人が杭となった角材を踏みつけたときのことだ。嫌な予感に彼が顔を上げると、天高く、甲高い声で囀る飛雷千鳥の群れが、待ってましたとばかりに翼へ溜めたいかづちをこちらへ撃つ、撃つ、撃つ!
「なっ…!?」
慌てて杭の向こう側へ着地した狩人にかつがれたままのアカリからは、その後のこともよく見てとれた。
いかづちは一直線に杭を穿ち、雷スライムへ浴びせられた。容量オーバーの魔力に弾けとんだスライムから転げ出た妖精が、粘液にむせながら飛雷千鳥の不敬を金切り声でなじっている。
狩人が一歩駆けるたび背後に消えていく観客席からの喝采には、運ばれながら頭を垂れた。
「な、今の、何の音だ…!?」
アカリがゆっくり顔を上げながら、すらすらと述べる口上は、いつもの売り文句よりも幾らか芝居がかって響いたことだろう。
「恩人さま恩人さま、武器が入用とおっしゃいましたね。でしたら、戦時特価のとっておきがございます。普段はただの職人道具。しかし、今日この日この時には、どんな槍より剣より頼りになることでしょう。その名は、そのまま『火打ち槌』」
「……なあ、お嬢ちゃんは何者なんだ?」
「申し遅れました。わたしは通りすがりのコマティ商、アカリ・トトゥルムと申します」
コマティは今、外してますけど。
そう付け加えながら、入った路地で狩人の腕の中から降りると、アカリが拾い上げたのはいささか古ぼけた配管工用の槌である。蒸気都市のあちこちを彼らがとんてんかんてん打ってまわる、あの何の変哲もなさそうな工具だ。槌は大中小とあり、小さなものは釘でも打てそうなトンカチほど。大きなものは、大の男が両手で振り回さなければならないぐらいの大きさである。
アカリはくるりと小さなそれの底部を持ち上げて、狩人の目に見やすいように傾ける。底部に刻まれているのは、調理用の鍋と思しき紋様と、それを囲うようにして掘り込まれた呪文である。
「これでれっきとした魔法機械でしてね。ここには妖精言語でこう書いてあります。」
ぱたた、ぱた。
ぎくりとして狩人が顔を上げる。冑の上、はかったようなタイミングで垂れてきたのは、二人の頭上の蒸気パイプにとりついていたらしい平原スライムである。ぎとぎと大金蟲色に黒光りするさまは、そこら中にたまった油を舐めて、オイルスライムに変容しかかっている。
狩人と同じく頭上を仰ぎながら、アカリは口上をやめない。それどころか、軽く素振りをすると、自分の横に張り出た蒸気パイプのひとつへ、火打ち槌を勢いよく振りぬいた。
「『おお、汝偉大なる森の魔女の火鍋の番人よ。火蜥蜴の咆哮じゃまだ弱い、戦士の血潮より煮立たせよ!』」
かあん。
「…な、なんだ? 何も……うおっ!」
間抜けな金属音から、一秒、二秒。槌で打たれた配管が、みるみるうちに赤く染まっていく。見慣れた蒸気都市のパイプの姿だ。次の瞬間には、目覚ましの槌に叩き起こされた蒸気の精が汽笛のような鳴き声を上げ、真っ赤なスタンプあとを起点に上下へわっと駆け抜けた。蒸気パイプは赤銅色の火炎蛇になると、その身にまとわるスライムをじゅうじゅう沸騰させてしまった。粘性動物は、べったりと黒い跡を残して水蒸気に変わる。
「さあ、小さくてこの威力。生憎とわたしの細腕ではこれ以上の実演販売は出来ませんが、ほら御覧ください、恩人さま。ちょうどよく試し撃ち相手の登場ですよ。あの屋根から覗いているのは、大ラムートンの頭ですか?」
飛行船雲よりも大きな影がすっぽりと辺りを包み込む。
少なくとも中級以上の得点をもつであろう巨大ラムートンが、二人のいるまさにその場所に足を下ろそうとしていた。おいおい、冒険者協会は何を考えてやがるんだ。観客達が息を呑む音さえ聞こえてきそうだ。
逡巡したのはほんの数秒だった。狩人の節くれだった指が、大槌の柄を握る。
路地には、彼らが踏み潰されないよう左右へ逃げる道はなかったが、橋のように架かった大きな蒸気パイプが二人の頭上を幾重にも覆っていた。そのうちの、一番太いものとつながる支柱の前に立つ。何故だか、自然と笑みがこぼれた。こちとら、先日ドラゴンを倒したばっかりだ。身体がでかいだけの平原モストロを見据える。口を開く。
「だが――…お高いんだろう?」
「そこは戦時特価の恩人特価。特別に、5万f(フィル)でご提供いたしましょう」
後払いでも結構ですよ。
囁く声と、パイプが爆発せんほどの蒸気を噴いたのは、どちらが早かっただろうか。
- - - - - - - - - -
『おお、汝偉大なる森の魔女の火鍋の番人よ。火竜の鼻息じゃまだ弱い、恋乙女より身を焦がさせよ』
焼けた文字が黒く静まる。ぐらりと傾いたラムートンは、何軒かの家々を挟んで向こうの広間に倒れたようだ。土煙やレンガの破片がおさまると、狩人はふと気になってコマティ商を振り返り、訊ねた。
「ところで、俺があのまま武器だけ持っていったら、どうするつもりだったんだ?」
焼けたラムートンの匂いにうっとりと目を瞑っていたアカリは、肉を捌くために出したらしいナイフを小ぶりの火打ち槌に持ち替えて答えた。
ごくごく軽く、かつんと手近な蒸気パイプを打つと、それはぐねぐねと入り組んだ配管迷路を通って、狩人の眼前を赤々と熱するのだった。アカリが口を開く。「この街の配管地図は、一度読んでみんな頭におさめましたし」
「それに、貴方の鎧はわたしのお鍋と同じ素材ですよ」と。